長期平準定期保険の仕組みと活用法

法人向けの生命保険の中でも代表的な、長期平準定期保険の仕組みや特徴、メリット、デメリット、税務処理等について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
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長期平準定期保険とは、法人向けの保険になります。個人向けの、終身保険や医療保険、がん保険などと違うのであまりなじみのある保険ではないかもしれません。法人向けの保険とは、その名の通り、企業のための保険になります。企業に保険なんているのって思われている方も多いと思います。しかし、企業にも保険は必要です。多くの経営者は、法人保険を利用しています。では、なぜ多くの経営者は、長期平準定期保険を利用しているのでしょうか?

長期平準定期保険とは

企業経営のためにある、長期平準定期保険とは、いったいどのような保険なのでしょうか。保険という名前がついているくらいだから保険金が出るのでしょう?と思っている方。正解です。長期平準定期保険は、死亡保険に分類される保険になります。保険の対象者である、オーナーやキーマンとなる役員に万がーのことがあったら保険金が出る仕組みになっています。オーナーや役員に万が一のことがあったら会社は大きく混乱します。混乱している会社にとって大きな死亡保障は大きな助けになります。

しかし、長期平準定期保険は、死亡保障のためだけにある保険ではありません。多くの経営者が利用する長期逓増定期保険の魅力とはどのような点なのでしょうか?

長期平準定期保険のメリット

この章では、長期平準定期保険のメリットについて説明します。長期平準定期保険は、法人保険の中では逓増定期保険と並んで利用者数の多い保険になります。多くの経営者が、長期平準定期保険を利用しているということは、それだけメリットがあるということです。長期平準定期保険のメリットについて主なものを8点説明します。

定期保険なのに保険期間が長い

長期平準定期保険のメリットの1つ目は、定期保険なのに保険期間が長いことです。個人で加入する定期保険の保険期間は長くても30年くらいです。しかし、この長期平準定期保険の保険期間は、95歳満期や100歳満期のものが多いです。95歳満期や100歳満期なので実質、終身保険と同じようになります。

保険料が一緒

長期平準定期保険のメリットの2つ目は、保険料がずっと一緒のことです。本来、生命保険は、年齢が上がるにつれて、死亡率が上がるので、保険料は高くなっていきます。しかし、長期平準定期保険の保険料は契約から満期までずっと一定です。

保険料が一緒の理由

なぜ保険料が一定になるのかについて説明します。年齢が若いうちは、保険料のうち一部を死亡率の上がる後半に備えて積立します。年齢が高くなってきたら、毎月の保険料だけでは死亡保障を補えなくなるので前半に積み立てをしていた分を取り崩して保障に充てます。このような仕組みになっているので保険料は一定になるのです。保険料が一定なので支払いの計画も非常に立てやすくなっているのは大きなメリットです

更新の時の心配がない

一般的な個人の定期保険だと、満期を迎えるたびに保険料が上がってしまいますし、更新時の健康状態によっては保険の更新が出来なくなってしまう可能性があります。長期平準定期保険の場合は、更新がないのでそのような心配もありません。

解約返戻金が高い

長期平準定期保険のメリットの3つ目は、解約返戻率が高いことです。解約返戻率のピーク時には、元金のほぼ100%まで解約返戻率が上がります。解約返戻率のピークは、数年間続くので解約の時期を柔軟に選ぶことが出来ることも大きなポイントになります。

退職金の準備が出来る

長期平準定期保険のメリットの4つ目は、退職金の準備が出来ることです。長期平準払い保険は、解約返戻率が、ピーク時には100%を超えるのでこの解約返戻金を利用して、退職金に充てることが出来ます。

経営者が、勇退するときは、多額の退職金を払うことが一般的です。また、長期平準定期保険は、キーマンとなる役員や営業部長なども保険の対象者にすることが出来ます。会社のキーマンの退職金も多額になることが多いので長期平準定期保険を利用すれば退職金を計画的に用意することが出来ます。

オーナーや役員の死亡保障の準備が出来る

長期平準定期保険のメリットの5つ目は、オーナーやキーマンとなる役員の死亡保障の準備が出来ることです。特に中小企業の場合は、オーナーやキーマンとなる役員に万が一のことがあったら大変です。

オーナーやキーマンに万が一のことがあった場合

オーナーやキーマンに万が一のことがあると経営に大きな影響が出てしまうことは否定できません。長期平準定期保険は、満期まで保険金が変わらず一定なのでオーナーやキーマンに万が一のことがあった時にしっかり保険金を確保することが出来ます。

これは、計り知れない安心感につながります。オーナーやキーマンに万が一のことが起こり混乱している会社に大きな保険金が残るということは今後の会社の立て直しに大きな助けになるのです。

資金調達が出来る

長期平準定期保険のメリットの6つ目は、緊急資金の確保が出来ることです。会社を経営していると予期せぬことが起こるものです。例えば、予定していた売掛金の回収が出来なかったり、大きな取引をキャンセルされたりと日々、想定外のリスクがあります。緊急に資金が必要な時に長期平準定期保険は役に立ちます。長期平準定期保険を利用した資金調達方法は2パターンあります。

長期平準定期保険を解約する

長期平準定期保険を利用した資金調達の方法の1つ目は、長期平準定期保険を解約して資金化することです。長期平準定期保険は、先ほどから述べている通り、解約金のピーク時には、元金の100%近くまで返戻率が上がるものが一般的です。ある程度、解約返戻率が高いタイミングで解約して緊急資金に充てることは可能です。しかし解約の場合の注意点は、契約してから当面は解約返戻率が低いことです。また解約返戻率のピークが過ぎてしまうとその後はどんどん解約返戻率は悪くなってしまいます。

契約者貸付を利用する

長期平準定期保険を利用した資金調達の方法の2つ目は、契約者貸付を利用する方法です。契約者貸付とは、解約返戻金の80%~90%の範囲内でお金を借りることが出来る仕組みです。金利は、保険の利率+1%前後であることが多いです。契約者貸付は、解約返戻金を担保にするので、審査などは必,要ありません。申し込みをしてから1週間程度お金を借りることが出来ます。

法人税の節税が出来る

長期平準定期保険のメリットの7つ目は、法人税の節税が出来ることです。長期平準定期保険は、前半6割の期間の保険料は2分の1を損金計上、2分の1を資産計上という税務処理になります。後半4割の期間は、保険料を全額損金計上する税務処理になります。長期平準定期保険を解約した時に、退職金などの経費をぶつけることが出来れば大きな節税になるのが長期平準定期保険のメリットです。ただし後半4割の期間は、解約返戻率が悪いのであまり前半に解約するのが一般的になります。

事業承継に利用できる

長期平準定期保険のメリットの8つ目は、事業承継に利用できることです。事業承継は大変です。多くの中小企業が事業承継に頭を悩ましています。帝国データバンクによると、70~74歳が社長の企業でも約4割の企業で後継者が決まっていないと答えています。事業承継がスムーズに行えていない状況を勘案し国も対策をしています。

事業承継の特例

事業承継税制の特例が2018年に創設されました。大きく分けて5つの特例が創設されています。

  1. 取得した全ての株式を納税猶予対象とする。(改正前:発行済議決権株式総数の3分の2まで)
  2. 納税猶予割合を相続税·贈与税ともに100%とする。(改正前:相続税80%、贈与税100%)
  3. 対象となる後継者は最大3名までとする。(改正前:同族内の筆頭株主の者のみ)
  4. 代表者以外の者から取得する株式も対象とする。(改正前:代表者かつ同族内で筆頭株主であった者からのみ)
  5. 雇用確保要件(雇用の8割以上維持)を満たさない場合であっても、要件を満たせない理由を記載した書類を都道府県に提出し、一定の要件を満たせば納税猶予の期限は確定しない。

というものです。このように国も、中小企業の事業承継に真剣に取り組み始めていますが、多くの経営者を悩ますのが自社株の問題です。

自社株がネック

自社株の評価に、資本金の多寡は基本的に関係がないので例え資本金が少額でも、長期間利益を出している会社では、1株当たり数十倍、数百倍に値上がりしているというケースもあります。この高くなった株価が、事業承継を行う際の大きな問題になります。自社株の評価を下げるためには、利益を出さずに損失を出せばいいのですが、事業を行っている以上、損失を出すことはよくありません。銀行の借り入れなどに大きな影響が出てしまうからです。

自社株の評価を下げるのに長期平準定期保険はおすすめ

自社株の評価下げに長期平準定期保険の保険料が役に立ちます。自社株は、会社の規模によって異なりますが、類似業種比準方式が使われることが多いです。類似業種比準方式とは、同業の上場会社の株価をもとに、会社の1株当たりの配当、利益、純資産の3つから評価する方式です。長期平準定期保険の保険料は、一部費用計上することが出来るので、長期平準定期保険の保険料は、利益を圧迫することになるのです。利益を圧迫することで、結果的に自社株の株価を引き下げることになります。

相続の時も長期平準定期保険は役に立つ

経営者に万が一のことがあった場合、自社株を経営者以外が持っていた場合は、自社株の買い取りが必要になります。長期平準定期保険の保険金を自社株の買い取り資金に充てることが可能になります。
以上8点が長期平準定期保険の主なメリットになります。

長期平準定期保険の税務

この章では、長期平準定期保険の税務処理について説明します。税務上、長期平準定期保険とみなされる条件は、

保険期間満了時の年齢が70歳を超え、かつ(保険加入年齢+保険期間×2) >105

となります。

長期平準定期保険の税務処理のやり方

長期平準定期保険の税務処理のやり方について説明します。保険料の支払いの段階の税務処理、解約した段階での税務処理、万が一が、あった時の税務処理に分けて説明します。

保険料支払いの段階の税務処理

保険料の支払いの段階の税務処理は、保険料を支払う最初の60%の期間と残り40%の期間によって異なってきます。

なぜ全期間、同じ税務処理ではないのでしょうか?それは、保険料が全期間一定のことと死亡率が関わってきます。本来、保険は、年齢が上がるにつれて死亡率が上がっていくので保険料は毎年上がっていくはずです。例えば満期が100歳の保険で、契約時の年齢が40歳だとすると、満期に近付くにつれ当然、死亡率はどんどん上がっていきます。しかし、長期平準定期保険の保険料は、満期まで常に一定です。

保険料が変わらない理由

何故かというと保険料が変わってしまうと加入者にとってあまり好ましいことではないためです。保険料が毎年変わってしまうと財務諸表にも影響してしまいます。そこで保険会社は、保険料を一定するために、保険期間の前半の間、保険会社が後半の保障に充てるお金を預かっておく仕組みを採用しているのです。要は保険料の前払いを受けている形になります。これを「前払保険料」と言います。そうすると前半の期間の保険料は、全額保険金を受け取るための保険料ではありません。純粋に保険金を受け取るための保険料と後半の保障のための前払い保険料に分かれます。後半の保険料は、年齢が経っているので後半の保険料だけでは契約した保険金を受け取るための保険料には足りません。そこで前半の前払い保険料を、契約した保険金を受け取るための保険料に充てるのです。これを会計上どのように取り扱うのかを厳密に行うと非常に難しいため、前半60%、後半40%で保険料の取り扱い方を変えているのです。前半60%は、前払保険料が含まれているため、半分を資産計上、半分を損金計上にしているのです。

解約した段階の税務処理

長期平準定期保険を解約した時の税務処理ですが、解約返戻金のピークは前半60%の間に迎えることが多いのでピークで解約した場合の税務処理について説明します。

逓増的保険を解約した場合の税務処理ですが、

解約返戻金-前払保険料=雑収入

という形になります。解約返戻金から前払保険料を引いた金額が雑収入として課税の対象になります。

万が一があった段階の税務処理

万が一があった時の税務処理ですが、基本的に解約返戻金を受け取った場合と一緒になります。

保険金-前払保険料=雑収入

という形になります。

長期平準定期保険の税務処理の注意点

この章では、長期平準定期保険の税務処理の注意点について説明します。

保険料支払いの段階の税務処理

保険料支払いの段階での税務処理の注意点は、やはり前半60%と後半40%で税務処理が異なってくることです。長期平準定期保険は、解約返戻金のピークが、前半に来ることが多いので後半の税務処理についてはあまり取り上げられることがありません。しかし、満期まで長期平準定期保険を持っている可能性は「0」ではありません。後半の長期平準定期保険の保険料はすべて損金計上出来ることは一応知っておくことは重要です。

解約した段階の税務処理

解約した段階での税務処理の注意点は、ずばり出口戦略です。解約をすることによって出た雑収入を退職金などの費用に充てることが出来なければ、この雑収入に対してしっかり課税されてしまいます。課税されてしまったら単なる課税の繰り延べになってしまうのでしっかりとした出口戦略を持つことが重要になります。

万が一があった段階の税務処理

万が一があった時の税務処理ですが、これについては特に注意点はありません。もちろん保険金の受取で発生した雑収入を何かの費用に充てることが出来ればいいですが、人はいつ亡くなるか分からないのでそこまでの予想は難しいでしょう。したがってもちろん費用に充てることが出来ればいいですがそれよりも経営者に万が一のことが起きた時のその後の経営についてどうしていくかをしっかり考えておくことの方が重要です。

長期平準定期保険のデメリット

この章では、長期平準定期保険のデメリットについて説明します。メリットの大きい長期平準定期保険ですが、メリットばかりだけでは当然ありません。長期平準定期保険のデメリットは5つあります。

キャッシュフローの圧迫

長期平準定期保険のデメリットの1つ目は、キャッシュフローの圧迫です。年齢40歳の男性が1億円の長期平準定期保険に加入した場合の年間の保険料は約250万円と高額です。キャッシュフローが潤沢に回っていれば問題はありませんが、起業したての企業などキャッシュフローが脆弱な会社に、長期平準定期保険は向きません。長期平準定期保険は保険料の負担が重いのでキャッシュフローを圧迫してしまうデメリットがあります。

保険料に上限がある

長期平準定期保険のデメリットの2つ目は、保険料の上限があることです。長期平準定期保険に加入するためには、当然審査が必要になります。健康状態に不安がなければ良いですが、健康状態に不安がある場合には、大きな保険金額を掛けることが出来ません。また死亡保障の限度額は5億円に設定している保険会社が多いです。もっと高額の保障がほしい経営者の方にはデメリットになります。

(余談ですが、各保険会社、死亡保険金を5億円に設定しているところが大きいですが、保険会社の担当者の裁量で保険金額を増やすことが出来ます。特に外資系の保険会社にその傾向は強いのでよく確認してみるのが大切です)

早期解約のリスク

長期平準定期保険のデメリットの3つ目は、早期解約のリスクです。長期平準定期保険は契約してから早期に解約してしまうと大幅に元本が割れてしまいます。長期平準定期保険を契約するときは、長期間にわたって保険料を払うことが出来るかを検証することが重要です。契約するときの業績がたまたま良くても過剰な保険料で契約しないように注意することが重要です。

解約するタイミングによっては意味がなくなる

長期平準定期保険のデメリットの4つ目は、解約するタイミングによっては長期平準定期保険に加入した意味がなくなることです。オーナーの退職金のために長期平準定期保険に入る方はたくさんいます。しかし、オーナーが予定通りに勇退しない場合はどうでしょうか?せっかく、綿密に計画を練って長期平準定期保険に加入しても意味がなくなる恐れがあります。ただし、長期平準定期保険は、逓増定期保険に比べると、解約返戻金のピーク期間が長いので多少オーナーの優待がずれても対応は可能になります。

解約時の出口戦略によっては意味がなくなる

長期平準定期保険のデメリットの5つ目は、解約時の出口戦略によっては、節税の意味がなくなってしまう可能性があることです。長期平準定期保険を解約すると益金が出ます。この益金にオーナーの退職金などの費用をぶつけることが出来なければこの益金に対して課税されてしまいます。よって出口戦略をしっかり考えておかないと単なる税金の繰延になってしまう可能性があります。

長期平準定期保険に向いている企業とは

長期平準定期保険に向いている企業は、オーナーやキーマンとなる役員の年齢が低い企業になります。長期平準定期保険の解約返戻金のピークは20年~30年後のことが多いので若い経営者に向いている保険なのです。

長期平準定期保険の種類

長期平準定期保険には、2つの種類があります。長期平準定期保険の用途によっておすすめは変わってくるので自分に合ったタイプを選びましょう。

退職金だけが目的の場合

数十年後の退職金の用意だけを目的に長期平準定期保険に加入する場合は、低解約返戻型といわれるタイプがおすすめです。低解約返戻型とは、契約当初の解約返戻率は低く、退職金を受け取る数十年後に急激に返戻率が上がるタイプの保険です。低解約返戻型の場合は、ピーク時の解約返戻率が100%を超えるものも珍しくありません。計画的に退職金を用意していきたい会社に、低解約返戻型はおすすめ出来ます。

節税をしつつ、運用してお金を殖やしたい場合

法人税の節税をしつつ、運用してお金を殖やしたい場合は、変動型と呼ばれる長期平準定期保険をおすすめします。変動型とは、解約返戻金が固定されておらず運用の実績によって異なってくる商品になります。保険料の一部を投資信託などで運用されるタイプになります。運用実績によっては大きく増える可能性はありますが、大きく減ってしまう可能性があります。

また変動型の長期平準定期保険の問題点は、保険関係費用と呼ばれるランニングコストが高いことです。ランニングコストが高くても積極的に運用をしたい方には、おすすめです。

まとめ

今回は、長期平準定期保険について説明しました。長期平準定期保険は、オーナーやキーマンとなる役員が若い会社に特におすすめの法人保険になります。長期平準定期保険は、保険期間が長くなる保険商品ですので自社の将来について考えるいいきっかけになるのではないでしょうか。ぜひ長期平準定期保険を有効活用し、自社の経営に役立てていきましょう。

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