1.はじめに
土木構造物保険は、一般的認知度は低い保険ですが、道路・トンネル・橋梁など交通の要となる土木構造物を自然災害から守る重要な役割を担う機能があります。補償内容な注意点について、ご説明します。
2.土木構造物保険の概要
土木工事によって建設された完成後の構造物(道路や鉄道、トンネル、橋梁など)を保険の目的として、風水災による損害や、土砂崩壊、陥没などによる損害、不測かつ突発的な事故によって生じた損害を補償する保険です。保険の目的が公共物であることも多く、その性格上、保険金額の設定と損害額の認定について特徴があり、事前に保険会社と被保険者で協議して決定します。契約者は主に官公庁、第三セクター、公団、私鉄会社です。
3.保険の対象物(目的)の範囲
保険約款上は、証券記載の土木構造物と定義され、具体的な例としては道路、トンネル、橋梁、鉄道、港湾施設、ダムなどがあります。
4.保険の目的に含まれないもの
住宅・店舗・工場、その他の建物、これらの基礎は保険の目的に含まれません。保険の目的である土木構造物に定着・固定・接続されていても含めることはできません。
また、土木構造物に収容・保管された物も対象になりません。
5.保険金額
土木構造物は、時価または市場流通価格の算定基準を固定することが難しいため、被保険者(または契約者)と保険会社が共に評価・協議して保険金額を決定します。損害額の算定は、保険の目的である土木構造物について、損害が発生する直前の状態に復旧する費用とし、再調達価格を基準として算出する点も特徴です。
6.保険期間
通常1年です。保険契約者との保険会社の協議により1年超の契約も可能です。
7.保険料
大規模な土木構造物を保険の目的としていて、一般個人や民間企業が加入するケースは極めて稀であるため、保険料や保険料率水準は開示されていません。
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8.保険金を支払う場合
不測かつ突発的な事故による損害を補償します。
対象となる事故としては、次のようなものがあります。
- 台風、旋風、暴風、暴風雨、豪雨、洪水、高潮等の風水災によって生じた損害
- 火災、爆発、破裂、落雷によって生じた損害
- 盗難によって生じた損害 など
9.保険金を支払わない場合
- 保険契約者もしくは被保険者または工事現場責任者の故意もしくは重大な過失または法令違反によって生じた損害
- 戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱等によって生じた損害
- 暴動または騒擾じょう、テロ行為またはテロ行為の結果として生じた損害
- 不発爆弾または機雷によって生じた損害
- 官公庁による差押、徴発、没収または破壊・閉鎖など公的権力の行使による損害
- 地震もしくは噴火またはこれらによる津波による損害
- 核燃料物質(使用済燃料を含みます。以下同様とします。)もしくは核燃料物質によって汚染された物(原子核分裂生成物を含みます。)の放射性・爆発性など有害な特性によって生じた損害など
- 損害発生後30日以内に知ることができなかった盗難の損害
- 保険の目的の欠陥・瑕疵
- 保険の目的の性質によるさび、かび、腐食、はがれまたは自然の消耗もしくは劣化
- 温度変化、湿度変化に伴う膨張、縮小、凍結の損害
- 電気の作用または機械の稼働に伴って発生した電気的・機械的事故による損害
- 土砂の圧密沈下により沈下した土木構造物の位置の矯正費用
- 芝、植木、その他の植物に生じた損害
- 増設、改造、修理等の工事中にその工事部分に生じた損害
10.まとめ
土木構造物保険は、保険の目的が規模の大きな公共物であることから、大規模な自然災害に対する備えを目的としています。住宅や店舗に掛ける火災保険などと異なり、補償範囲が狭く、小損害を対象としませんが、大規模な自然災害(ただし、地震とその関連損害を除く)からの復旧費用の確保を目的としています。保険の目的が公共性の強い構造物であることから、保険金額の設定と損害額認定にも特徴があります。