総合賠償責任保険とは|補償内容・特徴・加入の必要性

総合賠償責任保険の内容を賠償責任保険の種類や業種ごとに紹介します。
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1.はじめに

事業を営む上で様々なリスクを補償する総合賠償責任保険をご存知でしょうか。賠償責任保険は様々な種類があり、それぞれの特徴を理解して組み合わせることが重要です。各賠償責任保険と業種ごとのリスクをまとめました。

総合賠償責任保険とは

総合賠償責任保険の役割について押さえましょう

2.総合賠償責任保険とは

総合賠償責任保険とは事業を営む上で加入しておくべき保険となります。事業活動のうえで人にけがをさせたり、人の物を壊したりと様々なリスクが存在します。

2-1.事業において必要な賠償責任保険がセットになっているもの

総合賠償保険とは各種リスクを補償する賠償責任保険がセットになった保険です。保険会社によっては建設業向けや製造業向けなど、業種ごとにパッケージ化された商品を販売しているものもあります。単品で賠償責任保険に加入することも可能ですが、補償漏れが発生する可能性もあるため総合賠償責任保険が便利と言われています。

総合賠償責任保険は後述する各種賠償責任保険を、必要に応じて付け外しすることができる保険です。そのため自分の業種に合ったリスクを補償できる商品となっています。

2-1-1.賠償責任保険がないとどうなる?

賠償責任保険が無いと、事業を営む上で賠償事故が発生した場合、突発的に賠償金を支払うことになり資金繰りが悪化する可能性があります。特に第三者にけがを負わせてしまった場合や最悪死亡させてしまった場合、数千万円~数億円の賠償金に膨らむ可能性があります。そういった賠償金を支払うことになると資金繰りが急激に悪化し、倒産リスクも発生します。総合賠償責任保険は万一に備える保険といった位置づけとなります。

2-2.賠償責任保険の種類について

賠償責任保険は様々な種類があり、損害保険の中でも最も種類の多い分野となります。まず各種賠償責任保険の内容を知ることが重要なため、保険ごとに概要を紹介します。

2-3.施設所有者賠償責任保険

施設所有者賠償責任保険とは、事業主が管理する施設に起因して起きた賠償事故を補償する保険です。例えば店舗の床が濡れていて、お客さんが足を滑らせて転んでけがをした場合の治療費を請求された場合などが当てはまります。その他にも業務遂行に起因する事故も補償できる点が特徴と言えます。具体的には社員が自転車で銀行に行く途中に人とぶつかってけがをさせてしまった場合、業務のために自転車に乗っていたので賠償義務は事業主にあります。そういった場合も施設所有者賠償責任保険で補償可能です。

2-4.生産物賠償責任保険

生産物賠償責任保険とはいわゆるPL保険と呼ばれるもので、事業主が製造した商品によって第三者がけがをしたり、物が壊れたりした場合の賠償金を補償できる保険です。例えば食料品製造業者で販売した食料品に異物が混入しており、食中毒が発生した場合などが当てはまります。また生産物は仕事の結果生産されたものとなるため、建設業においては施工した工事結果も生産物とみなされます。

ただし賠償責任保険は「人がけがをする」または「物が壊れる」ことが条件のため、異物混入が自社で発覚して回収する場合の回収費用は対象外となります。そういった回収費用を補償するリコール保険というものも存在します。

2-5.請負業者賠償責任保険

請負業者賠償責任保険とは工事や清掃など請け負った業務を遂行している際に、第三者をけがさせたり物を壊したりした場合に補償できる保険です。例えばハウスクリーニングで家の物を誤って壊してしまった場合の弁償にかかる費用などが対象となります。

2-6.保管物賠償責任保険

保管物賠償責任保険とは第三者から預かったものを壊してしまった場合の弁償費用を補償できる保険です。製造業などで取引先の在庫品を預かっている場合や、建設業などで工事に使う建設資材を預かっている場合などに必要となります。

2-7.情報漏えい賠償責任保険

情報漏えい賠償責任保険とは個人情報の流出などで賠償義務が発生した際に補償が可能な保険です。最近では個人情報保護の意識が高まっており、非常に取扱いが厳しくなっています。メールやFAXの誤送信から、社員が個人情報を持ち出して流出させた場合など業種を問わずリスクは存在していると言えます。

保険会社によっては賠償金だけでなく漏えいした際の対応をコンサル会社に依頼する費用や、被害者に対してお詫びとして配るクオカードなどの費用を補償することも可能です。

近年必要性が増し、加入する人が増えている保険といえます。

3.業種ごとの賠償責任保険の必要性

様々な賠償責任保険を紹介しましたが、業種によって必要な保険は違ってきます。次に業種ごとのリスクと必要な賠償責任保険を紹介します。

3-1.建設業の場合

建設業は高度な専門作業を用い、大型の重機や資材を使用することがあり賠償事故が発生しやすい業種と言えます。建設業において必要な賠償責任保険と、考えられる事故例をみてみましょう。

3-1-1.生産物賠償責任保険の事故例

  • 事故例その1

電気工事業において施工した電気設備、繋いだ電線などで接触が悪く、発火して火災になった。

この場合火災によって被害を受けた建物の修理費が対象となります。特に一戸建ての住宅の場合全焼しなくても、火災により発生したススなどで排気口や壁が汚れ、交換を余儀なくされる場合は高額な賠償になる可能性があります。

  • 事故例その2

配管工事業においてトイレの配管工事を行ったがボルトの固定が甘く、配管から水があふれ室内が水浸しになってしまった。

この場合も被害を受けた建物の修理費が対象となります。フローリングが浸水した場合、張りなおしとなると高額な賠償額になります。

  • 事故例その3

防水工事業において外壁に防水加工を行った際、加工が十分にできておらず雨漏りが発生し室内が水浸しになってしまった。

この場合も被害を受けた建物の修理費が対象となります。建物の建設では色々な業者が作業をしますが、事故が発生した際はどの作業に問題があったのかを調査します。そのため何年も前に施工した自身の工事に問題があり、賠償請求されることもあります。総合賠償責任保険では過去に施工した工事であっても、保険に入ってから発生した事故であれば補償可能となります。

こういった作業終了後の完成物を生産物とみなすため、生産物賠償責任保険は必要と言えるでしょう。

3-1-2.請負業者賠償責任保険の事故例

  • 事故例その1

建設現場に積んであった資材が倒れ、通行人にあたりけがを負わせてしまった。

この場合被害を受けた人の治療費等が対象となります。建築資材が大型の木材や鉄材が多く、人にあたると大けがに繋がる可能性があります。

  • 事故例その2

大型クレーン車を使用して作業をしていたところ、バランスを崩し倒れてしまい、クレーンによって近くの民家を倒壊させてしまった。

この場合倒壊させた民家の修理費、再建築費用が対象となります。またクレーンが倒れたことによって道を塞ぎ、近くのスーパーや飲食店に人が入れなくなり営業が実質出来なくなった場合の損害賠償を請求されるケースがあります。そういった損害は使用不能損害と言われ、別途特約等を付帯しなければ補償されない場合があります。

  • 事故例その3

外壁塗装のため塗料を吹き付けていたところ、風に乗って塗料が拡散、近くの駐車場の車に塗料がついてしまい損害賠償請求された。

この場合車の再塗装費用等が対象となります。塗装業における塗料の飛散・拡散は大きな損害に繋がります。風に乗って拡散するので被害が広範囲に及ぶうえに、車の再塗装は高額なケースが多いからです。保険会社によっては塗料の飛散・拡散には一定の支払限度額を設けている場合があるため、契約時にはどこまで補償されるか確認した方がよいでしょう。

3-2.製造業の場合

製造業は仕事中の賠償事故は少ないものの、製造したものに起因する賠償が多く考えられる業種です。製造業において必要な賠償責任保険と考えられる事故例を見てみましょう。

3-2-1.最も必要なのは生産物賠償責任保険

  • 事故例その1

製造したストーブを出荷したところ、一部欠陥のある製品が混入していた。購入した人が使用すると発火し、火事になり建物や家財に損害、住民にもけがを負わせてしまった。

この場合は建物や家財の修理費、けがをした人の治療費が対象となります。電気ストーブ、ガスストーブ問わず製品の欠陥から出火するものは大きな事故に繋がる可能性があります。

  • 事故例その2

製造したレトルトカレーに石が混入しており、購入して食べた人が石を噛んでしまい歯が欠けてしまった。

この場合は歯の治療費が対象となります。食料品において異物混入は直接の損害のみならず、出荷した製品の回収が必要となります。回収費用は生産物賠償責任保険では補償できませんが、別途リコール保険などで補償が可能となります。ただ回収費用は高額になることが多く、リコール保険も保険料は高額になるケースが多く見られます。

3-2-2.事業実態によっては保管物賠償責任保険も必要?

  • 事故例その1

エアコンの部品販売および修理をしている業者で、修理のため預かっていたエアコンを落として破損してしまった。

修理のために預かったエアコンは自分の所有物ではないため、賠償責任保険となります。こういった預かり品を補償するのが保管物賠償責任保険です。物を預かることが多い事業の場合、必要な補償と言えます。

3-3.その他業種の場合

賠償事案の多い建設業、製造業について紹介しました。その他の業種にももちろん総合賠償責任保険は必要となります。その他の業種での事故例を見てみましょう。

3-3-1.理容室・美容室では施設所有者賠償責任保険

  • 事故例その1

理容室でお客さんの髪をカットしている際、誤ってはさみでお客さんの耳に傷をつけてしまった。

この場合けがの治療費が対象となります。忙しく注意力が低下した際に事故は発生します。人間の手で行っている業務の場合、ミスは防げないと思った方が良いでしょう。

  • 事故例その2

美容室でお客さんにパーマをかけている際、パーマ液を誤ってお客さんの服にこぼしてしまい、汚してしまった。

この場合は衣類のクリーニング代等が対象となります。特殊な液体のため汚れが目立ってしまうこともあるかと思います。保険会社によっては理容室・美容院専門の総合賠償責任保険を販売しているところもあります。

3-3-2.小売店でも輸入品を扱う場合生産物賠償は必要

  • 事故例その1

海外のお菓子を輸入販売している小売店で、販売したお菓子に異物が混入しており食中毒となった。

この場合食中毒の治療費が対象となります。食料品の製造責任は通常製造者にありますが、製造者が海外の場合は輸入者に責任が生じます。そのため輸入品を販売する際は注意が必要と考えた方がよいでしょう。

4.まとめ

総合賠償責任保険について各種賠償責任保険と業種ごとの必要な保険、事故例を紹介しました。自分の営む事業においてどういったリスクがあり、どの補償をつければよいのかは代理店とよく相談のうえ契約すると良いでしょう。

どんな事業を一つの賠償事故から急激に資金繰りが悪化する可能性があります。万が一の事態に総合賠償責任保険で備えることは重要と言えます。

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