1.はじめに
請負業者賠償責任保険の事故形態は軽微なものから、大惨事までさまざまですが、比較的頻度の多い事故例を列挙します。
これらの事故が発生した際に、保険加入がない場合は、事故処理に多大な労力と時間が必要となります。事例を確認して保険の重要性を再確認しましょう。
2.請負業者賠償責任保険が対象とする事故
請負業者賠償責任保険が対象とする事故はおもに2つに大別されます。
2-1.請負作業遂行中の事故
- ビル改装工事中に高層の作業現場から電気ドリルを誤って落とし、通行人がケガをした。
- ビル新築工事中にクレーンが横転し、道路走行中の自動車を損壊した。
- ビル外装の塗装中にペンキ缶を落として通行人の衣服を汚した。
- ビル建設工事の足場が外れて落下し、隣接する建物を損壊した。
- ビルメンテナンス業者がビルの高所窓の清掃中に、工具を落としてしまい近隣の建物の屋根を壊した。
- 解体工事中に、解体物が落下して塀とフェンス・隣地境界プレート・タイルが破損した。
- 内装工事で、大理石の床板を取り替えた際、床板の給水管に穴をあけてしまい、階下のレストランが水浸しになった。清掃・修理費用に加えてレストランの休業損害も賠償関裕された。(高額事例)
- 建設機械で、土木工事中に地中埋設水道管を破裂させた。(高額事例)
- 道路工事作業中に、ショベ ルカーの操作を誤り、ガス 管を切断した。(高額事例)
- 工事現場の照明灯が消えて いたため、通行人が工事現場 の穴に転落し、ケガをした。
- 引っ越し家財移動中に壁に家財をぶつけて家財・壁を壊してしまった。(頻発事例)(左記事例の家財の損害は管理財物担保特約を付帯した場合は補償されます。)
- 人材派遣事業者が、家電量販店に搬入および納品の補助作業員を派遣したが、お客様の玄関で商品をぶつけ、装飾品を壊した。(頻発事例)
2-2.請負作業遂行のために所有、使用または管理している施設の欠陥、管理の不備により発生した事故
- 資材置場に積んであった材木が崩れ、遊んでいた子供がケガをした。
- 工事現場の照明灯が消えて いたため、通行人が工事現場 の穴に転落し、ケガをした。
3.近年の大事故
2018年3月、アメリカ・フロリダ州のマイアミで建設中の歩道橋が崩落して通行人・車を巻き込む事故が発生しました。4人が亡くなったほか、多数のけが人がでた大惨事がありました。
これが日本国内で発生した場合、民法第709条(不法行為による損害賠償)に準拠した損害賠償請求が行われます。建設中であった歩道橋が崩落した原因は、歩道橋の設計・施工になんらかの不備・瑕疵があった可能性が否定できず、発注者または請負業者が損害を賠償する責任を負うことになると考えられます。
亡くなった4名については、慰謝料、逸失利益など相当高額な賠償金が必要になるでしょう。さらに負傷者も多数あって、それぞれについて治療費、慰謝料、休業損害の補償が必要となります。
4.まとめ
請負業者賠償責任保険の事故例は、業態によりさまざまですが、事故発生の場合、被害者がまったく過失のない第三者であることが大半であるため、トラブルを回避するためには、法的な賠償責任を果たすことは、いわば「最低限の誠意」です。必ず加入しましょう。