1.はじめに
請負業者賠償責任保険の必要性、または加入可否について、法人か、個人事業かの問題は影響あるのでしょうか?ポイントを説明します。
2.請負業者賠償責任保険の必要性
請負業者賠償責任保険は、請負業務の遂行上、不測の事故の発生によって結果的に第三者への賠償責任を被保険者(請負業者)が負うことになった場合に備える保険です。その不測の事故が起きる可能性は、その請負業者が法人か、個人かによって変わるものではありません。したがって個人事業者にとっても必要な保険と言えるでしょう。
3.下請業務のみであっても加入は必要か
3-1.下請業者は請負業者賠償責任保険に加入していないケースがある
個人事業者は小規模事業であり、請負業務が下請受注のみであることを理由に、請負業者賠償責任保険に加入しない事業者はあります。
加入しない理由は、請負業者賠償責任保険では、請負工事について、元請業者が保険加入すると、その工事について下請業者も被保険者となり、補償の対象となります。下請けのみの受注、施工であれば加入不要との判断は、ここに準拠したものでしょう。
3-2.下請業者にも賠償責任が発生する可能性はある
下請のみの受注、施工の事業者が請負業者賠償責任保険に加入する必要性は、あります。それは、元請業者がこの保険に加入している場合も含めです。建設業関係者であっても、このことを認識されていない方も多いようです。
それは、工事現場にける事故で、下請業者が元請業者に対して賠償責任を負う事態になり、元請業者が手配した保険では対象にならないケースです。そのケースとは、元請業者と下請業者の間で発生した事故(例:加害者が下請、被害者が元請)や下請け業者同士の事故については、一般的には、請負業者賠償責任保険では免責となります。免責としている理由は、この形態の事故は、労災総合保険や建設工事保険で補償されるリスクが大半を占めるため、請負業者賠償責任保険の通常契約では対象外としています。整理してみましょう。
下請業者が加害者となり、元請業者(または他の下請業者)が被害者となるケースで、元請が手配した請負業者賠償責任保険、建設工事保険、労災総合保険で対象とならない事故の例をご紹介します。
- 建設工事作業中の下請業者Bが、元請業者Aの所有する建設機械を、破損した。
- マンションの新築工事で、下請業者B(管工事業者)が検査のために水圧をかけたところ、水圧を高くしすぎて漏水し、工事途中の内装に被害が出た。(このケースは内装も含めてマンション工事全体を元請業者Aが請け負っており、元請業業者Aとしては、内装工事部分は第三者のものに該当せず、請負業者賠償責任保険では保険金が支払われません。ただし、建設工事保険のワイド特約が付帯されていれば対象となります。)
- 下請業者Bが足場から落とした道具が、下にいた他の下請業者Cの車にぶつかり、ガラスを割った。(ただし、下請業者Cが加入する自動車保険の車両保険があれば、補償されます。)
これらの事故に伴う加害者である下請業者Bの賠償責任は、元請業者Aが加入した請負業者賠償責任保険とは、別に下請業者Bを記名被保険者として、交差責任担保特約を付帯した請負業者賠償責任保険に加入していれば、補償されます。
これらの形態の事故は賠償責任保険における被保険者相互間の事故で交差責任とよばれる形態の事故です。この交差責任に事故を補償するためには、交差責任担保特約を付帯した請負業者賠償責任保険に加入する必要があります。
下請のみの業務を行う個人事業者が交差責任を補償するために請負業者賠償責任保険に加入することは、コストがかかりますが、これらの事故のリスクを考慮して加入する意義はあります。ただし、保険会社が下請のみの業者を記名被保険者として交差責任担保の契約を引き受けてくれるか、はケースバイケースとなります。
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4.個人事業者であっても加入できるのか
保険会社の保険契約引き受け判断の基準として、個人事業者は引き受けないという基準はないと思われます。(保険契約の引受基準として差別的であるため)ただし、業種と事業規模、業界経験(年数)によって、引き受けしない可能性はあるため、個別に保険会社に確認しましょう。
4-1.個人で加入する請負業者賠償責任保険の保険料
個人事業者が請負業者賠償責任保険に加入する場合の保険料は、保険料の計算方法について法人で加入する場合と違いはありません。また保険料は税務上、全額必要経費となります。
5.まとめ
個人、法人に関係なく請負業者賠償責任保険の補償内容は、請負業者にとっては必要で不可欠であると言えます。元請または下請など請負契約内容による保険加入の必要性については、請負契約締結時に確認しましょう。