施設賠償責任保険における交差責任の考え方・取り扱い方

賠償責任保険には「交差責任」と呼ばれる賠償形態があります。これは主に損害保険で使用される保険の専門用語ですが、施設賠償責任保険では、ほとんどの保険会社が法律上の賠償責任の有無に関係なく免責としています。この交差責任に関係に該当する場合は、注意を要しますので、ご確認をおすすめします。
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1.はじめに

賠償責任保険には、「交差責任」と呼ばれる免責事項があります。請負業者賠償責任保険では特約で補償することも可能ですが、施設賠償責任保険では、ほとんどの保険会社で免責としています。やや複雑な内容ですが、ご確認ください。

なお、施設賠償責任保険の記事一覧は施設賠償責任保険のすべてにまとめてあります。また、法人向けの損害保険全般について知りたい方は、法人向け損害保険のまとめに各商品ページへのリンクがまとめてありますのでぜひチェックしてみてください。

2.交差責任とは

交差責任とは通常、賠償責任保険の分野で専門的に使用される、いわば保険用語です。簡潔に言うなら、「被保険者相互間の賠償責任」になります。被保険者相互間の賠償事故は、賠償責任保険では補償対象外(免責)となります

木造住宅の建設工事現場の写真

被保険者同士の賠償事故のことを交差責任といい、施設賠償責任保険で注意すべき内容

2-1.施設所有管理者特約条項の被保険者

施設所有管理者特約条項の被保険者を確認します。パンフレット等においては下記のように記載されています。

被保険者とは次のa.およびb.に掲げる者をいいます。

  1. 記名被保険者
  2. 記名被保険者の使用人等。ただし、記名被保険者の業務に関するかぎりにおいて、被保険者とします。

では、上記b.の「記名被保険者の使用人等」については、次のⅰ.からⅲ.に掲げる者をいいます。

  1. 記名被保険者の役員および使用人
  2. 記名被保険者の下請負人
  3. 記名被保険者の下請負人の役員および使用

これらは、建設工事の請負形態が分かり易い例です。工事現場では、元請は多くの下請けを使って仕事をします。こうした現場で、身内同士(下請対下請、元請対下請など)の事故が発生した場合、通常、免責となります。

ただし、請負業者賠償責任保険では、これを担保するために交差責任担保特約を付帯することが可能です。一方で、施設賠償責任保険には、ほとんどの保険会社で交差責任担保特約は付帯できない場合が多い状況ですが、元受・下請の関係にない場合の交差責任(被保険者同士の賠償)の事故については、被保険者の設定方法により、特約なしで補償対象とすることでできます

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2-2.具体例で考える

テナントビルのケースでご説明します。

契約者=ビルオーナー

被保険者=ビルオーナー、このビルの全テナント

上記の契約において被保険者であるテナントAの店舗で水漏れが発生(水漏れの原因はテナントA従業員の過失)。階下のテナントB店舗の商品が損害を被った場合、AのBに対する賠償責任は補償されるでしょうか?(漏水担保特約あり、交差責任担保特約なし)

このケースは、AとB共に同じビルのテナント同士であり、交差責任の事故と考えられます。このケースで被保険者について「ビルオーナーと全テナント」としていた場合、AとBはともにテナントとして一括り、つまり加害者=被害者となり、賠償責任が発生しないと考えられ、補償されない可能性があります。

しがって「全テナント」としないで、被保険者明細書により、テナント各社を個別記載することで、AとBは当然に別の者となり、賠償責任が発生し、保険で補償されることになります。これは、マンション等でも同様の取り扱いとなります。

3.まとめ

建物・施設の所有・占有・使用状況、または業態によって、交差責任の有無は変わってきますので、一括りには言えません。施設賠償責任保険をはじめとした賠償責任保険の加入時には想定される交差責任の有無と、補償の可否について保険会社に確認しておくことがベストです。

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