はじめに
施設賠償責任保険には、示談交渉サービスはあるのでしょうか?あると便利ですが、実はありません。なぜないのでしょうか?示談交渉サービスがないと示談交渉はどのように行うのでしょうか?わかりやすくご説明します。
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1.示談交渉サービスがある保険、ない保険
施設賠償保責任保険には示談交渉サービスはありません。保険会社が被保険者に代わり、示談を代行するサービスは自動車保険で一般的になっていますが、むしろ自動車保険が特別な位置にあります。
1-1.非弁行為とは
もともと保険会社が示談交渉をおこなうのは「非弁行為」ではないかという意見が弁護士の側からは有りました。非弁行為とは国が定める弁護士ではない者が示談交渉などをすることで、弁護士法に反し違法行為となります。
1-2.自動車保険は例外的に示談代行を認められた
しかし、自動車保険の普及と交通事故トラブルの円滑な解決のために、日本弁護士連合会は損害保険協会と協議を行い多くの自動車保険についての示談代行を認めました。
現在でも、厳密な法律論から見れば、自動車保険の被保険者の代わりに示談代行を行うことは、弁護士法違反にするという見解もあるため、保険会社も顧問弁護士の監督や提言に基づき代行している状況です。
1-3.施設賠償保険には自動車保険のような背景がない
一方で、施設賠償責任保険などの賠償保険は、こうした背景がないため、保険会社が示談を代行することは社会的に認められていません。保険会社もパンフレット等に「この保険には示談断交サービスはありません。」と表記しています。
1-4.個人賠償責任保険も同じ
また、賠償保険の1つである個人賠償責任保険についても、近年は示談代行サービスが付帯されています。個人賠償保険での示談代行サービスが認められるようになった社会的背景としては、
- 個人賠償保険の単独販売がほとんど無くなったこと
- 自動車保険の特約としての販売が主流となっていること
- 一般個人の日常生活における賠償事故を対象とするため、想定される損害賠償額が高額になりにくいこと
- 高額となるのは自転車の交通事故が想定され、自動車保険の事故対応に近いこと
などが考えられます。(個人賠償保険の示談代行は行われないケースもあります。)
2.示談交渉サービスがない場合の事故対応、被害者対応
施設賠償責任保険のほか、自動車保険以外の賠償保険は、示談交渉サービスは付帯されません。しかし、賠償事故に伴う被害者との交渉について保険会社からのアドバイスはもらえます。
また、示談代行をしないことが、保険会社が被害者とのコンタクトを一切取らないにつながるわけでありません。事務手続きや損害賠償に関する一般論を被害者に説明するなどのサービスは行ってくれるケースが多いので、示談交渉は独断で行わず、保険会社に相談しながらすすめることをおすすめします。
3.まとめ
施設賠償責任保険には示談交渉サービスは付帯されませんが、事故に伴う賠償トラブルの解決にむけてのアドバイスを受けられます。万が一、極めて大きな事故により弁護士の手配が必要な場合には、その紹介等も行ってくれるケースもあります。示談代行サービスがないから加入する価値がない、ということにはなりません。