はじめに
PL保険の対象となる事故が起きた場合、その製造者等には欠陥製品を回収する責任がありますが、関連する支出は非常に大きな金額になる可能性があります。その支出はPL保険では補償されません。リコール保険の対象となります。メーカーによってはPL保険と同様に重要な保険です。
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1.リコール保険とは
PL保険は生産物の瑕疵(かし)などにより、対人・対物事故の発生した場合の賠償責任を補償します。保険金支払いの要件は、賠償責任の発生です。
一方、リコール保険は、生産物の瑕疵(かし)による対人・対物事故の発生・拡大の防止などを目的としてリコール(回収、検査等の措置)を実施することによって、被保険者である加入企業が負担する諸費用を補償する保険です。
2.リコール保険の保険金支払い要件
リコール保険で保険金が支払われるのは、リコール実施です。(保険事故はリコール実施)
PL事故の発生や賠償責任の発生は要件ではありません。
(ただし、リコール補償をPL保険の特約として付帯した場合は、PL事故の発生が要件となります。)
このリコール実施については一定の条件がつきます。その条件の例としては、監督官庁への届け出、または、新聞やテレビなどマスコミへの謝罪広告のなどを行うことで、リコール実施の事実とみなすなど、です。
3.リコール保険の保険金の対象となる損害・費用
保険金で補償されるリコール費用に含まれるものは、社告費用、通信費用、確認費用、コールセンター設置および運営費用、コールセンター業務委託費用、代替品の原価、返還代金、運送費用、倉庫・施設の賃借費用、残業代等、出張費および宿泊費等、回収生産物および在庫廃棄費用、信頼回復広告費用などです。
4.PL保険とリコール保険の関連
PL保険とリコール保険は、保険金の支払い対象は異なるものの、1つの事故でPL保険、リコール保険が両方支払われる場合もあります。
例えば、缶詰に異物混入が発生し、購入者に事故が発生した場合、PL保険から、購入者への賠償責任相当額が支払われます。リコール保険からは、事故の再発・拡大を防止するための調査・確認費用や、異物混入の可能性のある製品の回収費用などが支払われます。
この事例で、実際の対人事故が発生時ない段階で、企業の自主調査で異物混入が発覚し、リコールを実施した場合は、PL保険からは支払われず、リコール保険のみ支払い対象となります。
なお、リコール保険はPL保険の特約として加入する事ができますが、保険会社の保険引受基準が比較的厳しいため、加入内容が制限される、あるいは引き受けを拒絶される場合があります。またリコール保険は保険料負担がPL保険よりも格段に重いため、予想される費用対効果を検討することが必要です。
5.まとめ
PL保険と同様にリコール保険も重要な補償機能を持った保険です。ただし、リコール保険は保険料負担が重いため、費用対効果を検証して加入を検討しましょう。