施設賠償責任保険|比較・見直しのポイント

施設賠償保険の保険料負担は、火災保険や自動車保険に比較すると負担が軽いため、商品比較や見直しをする機会は多くはなさそうですが、コスト対策として他の保険とのセットにする、または特約の検討に補償を充実するなどの余地はあるでしょう。ポイントをご説明します。
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はじめに

施設賠償保険は、多くの事業者が利用する保険で既に普及していますが、その内容を詳細に把握しているユーザーは少ないのではなでしょうか。商品比較や見直しのポイントをまとめます。

なお、施設賠償責任保険の記事一覧は施設賠償責任保険のすべてにまとめてあります。また、法人向けの損害保険全般について知りたい方は、法人向け損害保険のまとめに各商品ページへのリンクがまとめてありますのでぜひチェックしてみてください。

施設賠償責任保険の比較・見直し

施設賠償保険では、個別契約の設計方法や保険料計算方法の違いにより保険料に差が出ることも

1.保険料(コスト)の見直し

施設賠償保険は、ほとんどの損害保険会社が取り扱っていて、保険料水準に大きな差はないと思われます。しかしながら、個別契約の設計方法保険料計算方法の違いにより、契約内容によっては、保険料に差が生じる場合もあります。保険料見直しのポイントをご説明します。

1-1.保険料算出の基礎は何か?

施設賠償保険の保険料を算出する計算式は、保険料率(定数) × 保険料算出の基礎 です。この保険料算出の基礎は、保険を掛ける施設や業務の種類によって異なります。

施設の種類 保険料算出の基礎
販売・飲食業 面積
製造業 従業員の賃金
マンション・アパート・(貸)事務所 面積
駐車場 面積または収容台数
スポーツ・レジャー施設、公園 延入場者数
教育・保育施設 平均人数
レクリエーション・お祭り・イベント 延参加者数
エレベーター・エスカレーター 台数

上表は、一例です。保険料算出の基礎は、保険会社による違いはあまりなく、基本的な考え方は共有しているものの、一部で違いがあります。例えば、駐車場の例では、一台あたりの駐車スペースが大きめでゆったりしている場合は、保険料算出の基礎が収容台数を採用している保険会社の方が安くなります。

1-2.単独商品か、セット商品か

現在、損害保険は業種ごとのセットプランが増加しています。セットプランは、他の保険(火災保険、マンション総合保険など)に施設賠償保険などを特約としてセットするケースや、賠償保険を複数セットするケース(請負業者賠償+施設賠償保険+PL保険、企業総合賠償保険など)があります。

これらのセットプランの施設賠償保険の保険料は、一般的には単独契約よりも10%程度安くなります。(場合によっては、20%程度の差になる場合も)

2.補償内容の見直し、グレードアップ

賠償責任保険は全般的に免責の内容が複雑で難解、特約も多い傾向にあります。特約を付帯することで、免責を打ち消したり、賠償責任以上の補償を追加することができ、事故発生時のトラブルをよりスムーズに解決できる内容にグレードアップできます。主な特約をご説明します。

2-1.被害者対応費用特約

対人事故が発生した場合に、慣習として支出した見舞金(品)の費用や、対物事故が発生した場合の臨時に必要とした費用を保険でカバーできます。被害者に対する謝罪姿勢を示すことにもつながり、事故によるトラブルをスムーズにおさめる効果もあります。

2-2.昇降機特約

エレベーターやエスカレーターに起因する法律上の賠償責任を補償します。施設賠償保険を建物全体に包括的に契約する場合でも、エレベーターまたエスカレーターについては、この特約を付帯することで、補償されます。したがって、エレベーター・エスカレーターがある建物・施設については、施設賠償保険とセットで加入することが標準的な加入方法となります。

2-3.漏水担保特約

普通契約で免責となっている給排水管・冷暖房装置・消火栓などから排出、漏えい、氾濫した液体、気体、蒸気等による第三者の財物の損壊に起因する賠償責任を補償します。

—関連記事—
漏水担保特約について詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

2-4.工事発注者責任補償特約

被保険者が施設や昇降機の修理・改造・取壊し等の工事の発注者の場合に、工事の発注内容・指示のミスによる対人事故、対物事故の発生した場合に、被保険者が工事の発注者として法律上の賠償責任を負担することによって被る損害を補償します。

2-5.来訪者財物損害補償特約

施設内で保管する来訪者の自動車または原動機付自転車以外の財物が、滅失、破損もしくは汚損し、または紛失もしくは盗取されたことにより、被保険者が法律上の賠償責任を負担することにより被る損害を補償します。

2-6.人格権侵害補償特約

被保険者の業務上の行為に起因する人格権侵害または宣伝障害について被保険者が法律上の賠償責任を負担する事によって被る損害を補償します。

3.その他(追加被保険者の設定)

特約追加ではなく、被保険者の設定の手法を改めることで補償機能が向上する場合がありますので、注意しましょう。

賃貸ビル等の建物に複数の個室や事務所があって、テナントや個人複数入居しているケースで、オーナーまたは建物管理者の賠償責任とテナントや入居者の使用者としての第三者に対する賠償責任を補償する場合には、被保険者の設定について注意が必要です。

例えば加害者と被害者がともにテナントの立場にあるケースでは、共に被保険者でもあります。この場合、共に被保険者であることが被保険者同士の交差責任となるため、賠償保険では免責となる可能性があります。

これを防ぐため(=テナント同士の事故を補償するために)は、被保険者の設定方法を「オーナーおよびテナント」のような一括りにせず、個別テナントの法人名または個人氏名を明細に列挙・記載することで、交差責任を補償することができます。

実際の契約にあたっては、想定される被保険者同士の事故を例示の上、被保険者の設定方法を保険会社等に確認しましょう。

—関連記事—
交差責任について、詳しくはこちらの記事でも解説しています。

4.まとめ

賠償責任保険は、免責が難解であること、さらに特約が多数あることから、加入者を取り巻くリスクに応じた保険設計が必要です。保険設計は販売者である代理店や保険会社の営業マンのノウハウにより差異が出てきます。そうしたノウハウを引き出すために、あえて企画コンペ、競争見積もりを取ってみることも1つの手段と考えられます。

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