施設賠償責任保険とは|補償内容や仕組みなどの基礎知識

施設賠償保険は、施設の所有・使用・管理に起因する賠償責任を補償する保険です。また、被保険者の業務遂行上の賠償責任も補償しますので、事業者にとって重要な保険です。特に多くの来店客のある店舗、近隣に住宅などがある工場、事務所や住宅を賃貸する事業者には必携の保険です。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

はじめに

施設賠償保険は、施設の所有・使用・管理の関する瑕疵(欠陥)業務遂行に起因する倍賞責任を補償する保険です。

業務上の賠償責任を補償する保険は、生産物賠償保険請負業者賠償責任保険がありますが、すべて必要でしょうか?その補償内容や注意点をご説明します。

なお、施設賠償責任保険の記事一覧は施設賠償責任保険のすべてにまとめてあります。

また、法人向けの損害保険全般について知りたい方は、法人向け損害保険のまとめに各商品ページへのリンクがまとめてありますのでぜひチェックしてみてください。

施設賠償責任保険の基礎・必要性

施設賠償責任保険は、事業者や主催者の業務遂行に起因する法律上の賠償責任を補償するもの

1.施設賠償保険の重要性

施設賠償責任保険とは、施設や設備に起因する法律上の賠償責任を補償する保険です。さらに、被保険者である事業者や主催者の業務遂行に起因する法律上の賠償責任を補償します。

対象とする業種は幅広く、営利事業だけでなく、レクリエーション行事やイベント運営のためにも活用される保険です。

—関連記事—
イベントやレクリエーション運営上のリスクとその備えについてはこちら。

公立学校や公共施設についても、市町村など自治体が民間保険会社の運営する「全国市長会総合賠償補償制度、全国町村会総合賠償補償制度に加入していて、既に高い加入率になっています。

また公共施設の管理運営の委託を受けたNPOや民間企業(指定管理者制度)にも採用される保険です。これほど普及するのは、その補償内容が各種の事業運営に不可欠であるからに他なりません。

2.基本的な補償内容

施設賠償責任保険は、施設の安全性の維持・管理の不備や、構造上の欠陥または、記名被保険者の仕事の遂行が原因となり、他人にケガをさせたり(対人事故)、他人の物を壊したり(対物事故)したために、被保険者(保険の補償を受けることができる方)が法律上の損害賠償責任を負う場合に被る損害を補償する保険です。

事故の際には、被害者に対する損害賠償金弁護士費用などの各種費用も補償します。

2-1.施設賠償責任保険の補償内容が基づく法律

施設賠償保険が補償の対象とする賠償責任が準拠する法律は民法であり、不法行為責任工作物責任使用者責任などがあります。

2-1-1.不法行為責任(民法709条)

故意または過失により第三者の権利を損害した場合、これによって生じた損害を賠償する責任を負うことを、不法行為責任といいます。

2-1-2.工作物責任(民法717条)

工作物の設置または保存の瑕疵(欠陥)により第三者に損害を生じさせた場合、その瑕疵の原因をだれが作り出したかにかかわらず、まず、その工作物の占有者が責任を負うこと、占有者が損害の発生を防ぐために必要な注意を払い、具体的に行動していた事を証明できた時は、最終的に所有者が責任を負うことを工作物責任といいます。

2-1-3.使用者責任(民法715条)

業務遂行のために従業員など(被用者)を使用する者(使用者)は、その被用者が業務遂行上、第三者に与えた損害に対して責任を負うことを使用者責任といいます。

施設賠償責任保険はこれらの賠償責任を対象としています。

2-2.主な事故例

  • 自転車で商品配達中に通行人と衝突し、ケガを負わせた。
  • 従業員が不注意により来客にケガを負わせた。
  • 施設のガス爆発により入場者が死亡し、近隣の建物・車両等に損害を与えた。
  • 施設の壁が倒壊し、通行人にケガを負わせた。

2-3.保険金の種類

保険金請求をしたときに支払われる主な保険金の種類は以下の通りとなります。代表的な支払い項目を押さえておきましょう。

2-3-1.損害保険金

被害者に支払うべき法律上の損害賠償金です。身体賠償事故の場合は治療費・医療費・慰謝料など、財物賠償事故の場合は、修理費または再調達費用(民法上、時価額が限度となります。)ただし、自己負担金は差し引かれます。

2-3-2.損害防止費用保険金

被保険者が損害の発生・拡大を防止した際に支出した費用です。緊急措置費用、権利保全費用なども対象となります。

2-3-3.訴訟費用

保険会社との協議が成立した場合は、被保険者が支出した訴訟費用や弁護士報酬の費用を保険金として支払います。

3.加入対象となる事業者・業種

対象となる事業者は、施設を所有、使用または管理する業者または施設利用に関連した業務を行う業者であり、多くの業種が対象となりますが、特にピッタリはまる業種としては、貸ビル所有者、マンション管理組合、レストラン・飲食店経営者、各種小売店、工場など特定場所での製品製造業者や荷役作業者などです。

—関連記事—
貸ビル所有者、マンション管理組合に関連して、こちらの記事も参考にしてください。

なお、下記の業務については、専用の職業別保険商品(カッコ内の保険種目)があるため、施設賠償保険では対象としていません。

病院など医療施設(医師賠償責任保険)、ガソリンスタント(SS総合保険)、ホテルなど宿泊施設(旅館賠償責任保険)社会福祉施設や障害者支援施設や介護事業者の施設(福祉事業者総合賠償保険、介護事業者賠償責任保険など)

3-1.補償の対象となる方

対象となるのは、事業者本人(記名被保険者、法人・個人を問いません)と記名被保険者である事業者の業務に携わっている間の事業者の役員・使用人、事業者の下請負人、下請負人の役員・使用人です。

3-2.対象となる施設・設備・業務

契約締結時にあらかじめ取り決めた施設・設備や業務が対象となります。施設の内部の装置や設備等を含めて包括的に対象とすることも可能です。

4.保険期間

保険期間は原則1年です。なお、催事など一定期間のみ開催される業務やその施設・設備について開催期間のみ保険期間とすることは可能です。

5.保険の適用地域

保険適用地域は日本国内です。

6.支払限度額(保険金額)と自己負担額

支払限度額は、身体賠償と財物賠償のそれぞれに設定します。(身体賠償と財物賠償を共通の支払限度額で設定することも可能で、保険料が割引となります。)

自己負担額は、身体賠償と財物賠償のそれぞれについて、1事故当たりの自己負担額(免責金額)を設定します。自己負担額が高いほど、保険料は安くなります。

7.保険料

保険料は施設や業務の種類、その種類に応じた保険料算出の基礎(例:下表)、支払限度額、自己負担額の設定により決まります。

施設の種類 保険料算出の基礎
販売・飲食業 面積
製造業 従業員の賃金
マンション・アパート・(貸)事務所 面積
駐車場 面積または収容台数
スポーツ・レジャー施設・公園 延入場者数
教育・保育施設 平均人数
レクリエーション・お祭り・イベント 延参加者数
エレベーター・エスカレーター 台数

7-1.支払限度額、自己負担額、保険料の例

(業務の種類により保険料水準に幅があります。)

飲食店、総床面積100㎡ 自己負担額1,000円(身体・財物共に)保険期間1年間

身体賠償
1名につき 1億円
1事故および保険期間中限度額 2億円
対物賠償
1事故および保険期間中限度額 1,000万円
保険料算出の基礎 面積
保険料 13,800円

8.保険金が支払われない場合

  1. 契約者、被保険者の故意に起因する賠償責任
  2. 戦争、変乱、暴動、騒じょう、労働争議などに起因する倍賞責任
  3. 地震、噴火、洪水、津波または高潮に起因する倍賞責任
  4. 他人との特別の約定によって加重された賠償責任
  5. 記名被保険者および記名被保険者の使用人などが記名被保険者の業務に従事中に被った身体の障害によって生じた賠償責任
  6. 被保険者の同居の親族に対する賠償責任
  7. 記名被保険者が所有、使用、管理する財物の損壊について、その財物に対して正当な権利を有する者に対して負担する賠償責任(この免責で定義される財物は、記名被保険者が借用、受給、受託または支給された財物を含みます。賠償保険ではこれらをまとめて管理財物とよび、免責としています。)
  8. 給排水管、暖冷房装置等からの蒸気・水やスプリンクラーからの内容物の漏出・排出(漏水担保特約を付帯することで補償きます。)
  9. 建物外部からの内部への雨・雪等の浸入または吹込み
  10. 施設の新築、修理、改造、取壊し等の工事(請負業者賠償責任保険で補償)
  11. 自動車、原動機付自転車または航空機の所有、使用または管理(自動車保険など専用の保険で補償)
  12. 施設外にある船、車両(自転車は含まれません。)または動物の所有、使用または管理
  13. 販売した商品、飲食物を原因とする食中毒その他の事故(生産物賠償保険で補償)
  14. 仕事の終了または引渡し後、その仕事に欠陥があったため生じた事故(生産物賠償保険で補償)
  15. 石綿(アスベスト)、石綿の代替物質(それらを含む製品を含みます。)の発がん性その他の有害な特性
  16. 汚染物質の排出・流出・漏出・放出または廃棄物の不法投棄・不適正な処理
  17. 医療行為等法令により特定の有資格者以外が行うことが禁じられている行為

など

9.まとめ

施設賠償保険は、業種を問わず普及しており、事業者は是非、加入を検討すべき保険です。

ただし、免責が複雑、難解で注意を要します。特に業務上災害(上記「保険金が支払われない場合の5.)、管理財物(上記・同7.)、漏水等(上記・同8.)については、慎重にご確認されることをおすすめします。

また他の賠償保険との関係を確認して適切に加入しましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

工事保険の無料相談実施中!

建設・工事の保険の手配でお悩みではないでしょうか?

様々なリスクに応じて、最適な保険を選ぶのは大変ですよね。

建設工事保険総合センターでは、あなたの保険選びをプロが徹底サポート。

保険の無料相談はこちら