はじめに
PL保険は、PL法の制定後、普及しましたが、その普及のために行政機関や様々な産業界や団体が関わってきました。それは日本の経済が製造業に支えられており、PL法の法的責任を製造業者がしっかりカバーできることが、経済全体に必要であったからと言えます。
PL法の意義と施工後の経過を振り返り、製造業者におけるPL保険の必要性を確認しましょう。
1.PL法(製造物責任法)の内容と意義
PL法の正式名称は製造物責任法(平成7年施行)で、「製造業者等は、製造物の欠陥により、他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。」(同法3条の要約)として、欠陥製品に関する製造業者等の賠償責任を定めました。
同法の施行までは、欠陥製品で損害を受けた被害者は、主に民法の不法行為責任(民709条など)等によってメーカー等の責任を求めるしかなく、この場合、一般個人である被害者がメーカー等の故意・過失を立証しなければならず、被害者の救済の観点からは問題視されていました。
これに対応し、PL法は、被害者が、製造業者の故意・過失を立証しなくても、製品の欠陥による事故の事実を提示することで、製造業者に対し賠償を求める事を可能にし、製造業者に欠陥責任あるいは無過失責任を負わせることで、消費者保護・被害者救済を図っています。
これによって、製品の欠陥を原因とする被害者からの損害賠償請求に対し、製造業者はその欠陥の発生について、自社の過失等が原因ではなく、自社以外の者の過失または行為が原因であることを証明しない限り、逃れることはできなくなりました。
同法の目的・主旨である被害者救済に応えるために事業者は従来以上に安全性を高め、万が一の場合の賠償請求に備えることも必要になりました。
また、実際に製品の欠陥を原因とする事故が発生した場合は、同様の事故発生の防止のために、製品の回収費用等の出費が発生する可能性が高いため、PL法の定めによる賠償責任の負担はむしろ最低限度であると考えられます。それを補償する保険商品がPL保険(生産物賠償責任保険)です。
―関連記事―企業の賠償責任の保険全般については、このまとめページら確認できます。PL保険についての基本的な知識や概要については、こちらの記事でまとめています。
2.PL保険の重要性
PL法が平成6年7月に制定され、平成7年7月に施行されるまでの間、製造業者のみならず事業者は同法に定められた法的な責任を履行できるように懸命になりました。
PL保険は上記のとおり、PL事故の被害者救済の目的で制定されましたが、経済界としては、製造業者を守ることも重要で、当時の産業界全体の課題にもなりました。つまり、製造業者がPL法に定められた賠償請求に耐えられるようにすることも重要な課題となりました。
PL保険は、PL法制定前から生産物賠償責任保険として既にありましたが、PL法の制定により、企業ニーズが向上し、社会的にも重要な保険商品となった結果、商工3団体などの団体保険制度が充実し、普及した結果、保険料も安くなってきました。
加入率が向上した結果、PL保険に加入することは当然とされ、企業取引を円滑にし、消費者に商品安全性と事業者の健全性を示すことにもつながるため、事業活動のための前提となっています。現在では製造業者のPL保険加入は、事業展開の必要経費の位置づけであると言えます。
3.まとめ
PL保険はPL法の定める製造業者の賠償責任を担保するための最低限の補償であり、事業展開の必要経費と考えましょう。