1.はじめに
事業を行う上で、従業員や下請企業のけがを補償する労災上乗せ保険のニーズは高まっています。しかし保険会社各社が労災上乗せ保険を扱っているため、どのように比較すれば良いのかが悩みどころとなります。
ここでは労災上乗せ保険の比較時にチェックすべきポイントをまとめました。ぜひ参考にしてください。
また、労災上乗せ保険の概要を知りたい方はこちらでまとめています。
2.労災上乗せ保険の特筆すべき特約
自動車保険や火災保険など、個人向けの商品は各社ほぼ内容が同じなので、複数の見積もりを取って比較することが多いかと思います。
それでは事業者向けの労災上乗せ保険では、会社によって違いがあるのでしょうか。
2-1.基本的な内容は各社大きな違いはない
元も子もないと指摘されてしまいそうですが、実は損保各社が販売している「労災上乗せ保険」は、基本的な仕組みは同じです。
労災上乗せ保険自体は、「傷害保険」に位置づけられており、被保険者(保険がかかっている人)がけがをしたら保険金が支払われるというものです。その傷害保険を事業者向けにしたものを労災上乗せ保険として販売しています。
歴史の長い商品ということもあり、先に述べた通り各社大きな違いはありませんが、最近の労働環境の変化に合わせて、特約で若干の違いがあります。
2-1-1.雇用慣行賠償特約について
雇用慣行賠償特約とは労災上乗せ保険に付けられる特約で、ここ数年で生まれた比較的新しい特約です。内容としてはセクハラ・パワハラ等で会社が訴えられた場合、または不当解雇で会社が訴えられた際にその賠償金と弁護士費用等を補償する保険です。
最近はセクハラ・パワハラで会社が訴えられるケースが増えています。指導のつもりで部下を叱っただけなのにパワハラと受け止められ、慰謝料等を請求され頭を悩ませる経営者の方が増えています。そういった時代のニーズを受け止めて生まれた特約といえます。
この特約を販売している会社は限られており、各社補償内容も統一されていないので比較材料として注目するポイントになります。
2-1-2.メディカル特約について
メディカル特約とは会社の従業員が病気で入院した際、治療費を補償できる特約です。労災上乗せ保険では仕事が原因によるけがを補償しますが、メディカル特約の場合、仕事と関係のない病気で入院しても保険金支払いが可能です。
そのため福利厚生としてこの特約に加入する事業者が大半を占めます。事業者が費用負担をして従業員の医療保険を用意することができるので、従業員にとっては非常にありがたい保険といえます。
この特約を販売している会社はまだ少なく、保険料は高くなりますが比較検討するポイントと言えます。
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3.保険料水準や割引制度
労災上乗せ保険の補償内容は先ほど紹介した特約以外では、大きな違いがありません。それでは補償内容以外ではどういった点で比較すべきでしょうか。
3-1.保険料で比較する
最も分かりやすいのは、保険料(掛け金)で比較することです。労災上乗せ保険は掛け捨ての保険のため、当然全額損金計上できるとはいえ、事業者としてはできるだけコストを抑えたいのではないでしょうか。
労災上乗せ保険の保険料は、事業者の売上高と業種を基にして算出することが一般的です。売上が大きくなればなるほど保険料は高くなり、建設業や製造業などけがをしやすい業種であるほど保険料は高くなります。
そんな中で複数の会社の見積もりを取り、比較することが重要なポイントです。また保険代理店によって取り扱える保険会社も違うため、色々な保険会社を扱っている保険代理店に依頼するのもポイントです。
—関連記事—リスクの高い建設業・製造業などに限らず、「労災上乗せ保険はそもそも必要なのか」と疑問を持った方はぜひこちらも併せてチェックしてください。また、経営事項審査の加点という労災上乗せ保険の要チェックポイントを押さえたい方はこちらもどうぞ。
3-1-1.各社割引の制度について
労災上乗せ保険では一般的に、各保険会社独自の割引制度が用意されています。これは安全対策や事故防止運動など、事故が起こりにくいような取り組みを事業者が行っていれば、その分保険料を割引するという制度です。
割引制度は各保険会社でさまざまで、不定期に改定も行われるためここで全てを比較し尽くすことはできません。しかし「各保険会社独自の割引制度がある」ことを念頭に、保険会社や保険代理店の担当者に見積もりの依頼をすることが重要です。
3-1-2.不要な補償を外してコストを抑える手法
労災上乗せ保険は、設計の自由度の高い保険商品です。保険金額をいくらにするか、被保険者の範囲をどこまで広げるか・狭めるか、などの調整を行うことで、保険料も当然変わってきます。
よくみられるのが、基本セットのような状態のまま、よく補償内容を吟味せずに加入し続けているケースです。そのような入り方をしている場合は、不要な補償を外して保険料負担を抑えることができます。
ただし万一の際に補償できる金額が減るということになるため、補償を減らす、外すなどの場合には保険会社社員・保険代理店によく相談しながら検討することをおすすめします。
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4.まとめ
労災上乗せ保険を比較する際にチェックすべきポイントについてまとめました。各社用意している特約に違いがありますが、それ以外はほぼ同様の補償内容と考えて問題ありません。
重要なのは、事業の実態をできる限り正確に把握して、補償の範囲(被保険者の範囲)や厚さ(保険金額)を適切に無駄なく設定することでしょう。
万一の際に事業者と従業員を守るため、良いプランの労災上乗せ保険に加入できるよう専門家に相談しながら比較することをおすすめします。
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