1.はじめに
建築中の建物は、火災保険と建設工事保険のどちらに加入すべきでしょうか。実はどちらも加入することはできます。建設工事保険は、建設工事中の対象にかける火災保険のようなものと考えることもできます。しかし、建設工事保険に加入する方が補償される対象物、補償される事故の範囲は広がります。
ここでは建設工事保険と火災保険の違いに注目して解説します。
—関連記事—建設工事保険の全体像をつかみたい方はこちらの記事からご覧ください。建設工事保険と似た保険の違い、という意味では組立保険との違いも解説しました。
2.建設工事保険は工事工程の進捗に応じた補償が設計されている
それではさっそく建設工事保険と火災保険の違いをみていきましょう。
2-1.建設工事保険は補償範囲が広い
建設工事保険はその名のとおり、建設工事中の工事物件を補償対象としていますが、建設目的物である建物のみならず、工事で付随して施工される設備なども補償対象となること、さらに設計ミスや作業ミスによる損害も補償することなど、建設工事現場に沿った保険設計となっています。
2-2.通常の火災保険を使う場合のデメリット
一方で工事の補償対象物を火災保険で対応する場合、予め付随工事で施工される仮設物や設備について列挙・明記する必要があるなど、加入手続きが煩雑になり、実務上の負荷を考えると選択の余地はありません。
さらに、設計ミスや作業ミスについては、そのミスよって発生した事故の形態により補償されるか明確でないなど、建設工事保険よりも補償面で見劣りします。
したがって、工事中の物件に火災保険を契約することはおすすめできません。
2-3.発注者・元請け業者から「火災保険への加入」を促されたら
なお、発注者や施主が工事業者に対して工事物件について「火災保険の加入」を義務付ける場合がありますが、ほとんどの場合は、建設工事保険を含めた損害保険加入を促す意図であり、火災保険に限定していることは、ほとんどありません。
「建設工事総合保険センター」へ
建設・工事保険の無料相談窓口。従業員や下請け業者のケガ、第三者・対物の損害賠償、建設中の建物や資材の損害に対応。建設業の工事保険は、三井住友海上の建設工事総合保険センターへご相談ください。
3.それでも火災保険が建設工事保険よりも優れている点はある
かろうじて1点火災保険の方が有利な点があります。
3-1.住宅建物に限っては火災保険も有用
住宅建物の建築に限っては、地震保険をセットできる点において、建設工事保険よりも火災保険が優れています。
建設中の住宅について地震保険に加入するためには、火災保険とセットとする必要があり、その住宅に住むことが確定している人(施主)との請負契約、あるいは、施主がハウスメーカーである場合は、ハウスメーカーとその住宅に住むことが確定している人との売買契約が成立していることが最低条件となります。
また、その火災保険と地震保険を保険会社が引き受けるかは、保険会社の判断となります。なお、建設工事保険で地震を補償することは原則的にはできませんが、保険会社が独自に設計する「拡張担保特約」で補償を行う場合が稀にあります。
—関連記事—
4.まとめ
工事の保険は様々なものがあり、名称からはそれらの違いを簡単には把握できないものも多くあります。そしてそれらの商品群の中で、何を選べば自分(自社)の業態のリスクをカバーできるのか判断するのはなかなかに高度な作業です。
保険選びで迷ったら、すぐにプロに相談するのも一考です。
—関連記事—建設工事保険についてより詳しく知るにはこちらの記事もおすすめです。